蹉跌つまずき)” の例文
一生の身の蹉跌つまずきから、実は弟達にうことを遠慮するような人である。未だ森彦には一度も逢わずにいる。三吉に逢うのはようやく二度目である。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ふるい小泉の家をささえようとしている実が、幾度いくたびか同じ蹉跌つまずきを繰返して、その度に暗いところへ陥没おちいって行く径路みちすじは、ありありと彼の胸に浮んで来た。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
平田門人としての彼は、復古の夢の成りがたさにも、同門の人たちの蹉跌つまずきにも、つくづくそれを知って来た。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
不図ふとした身の蹉跌つまずきから、彼も入獄の苦痛をめて来た人である。赤煉瓦れんがの大きな門の前には、弟の宗蔵や三吉が迎えに来ていて、久し振で娑婆しゃばの空気を呼吸した時の心地こころもちは、未だ忘れられずにある。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)