跫音きょうおん)” の例文
その深遠なるバッハ再検討の大題目をひっさげ来りて、当代音楽界の一部に空谷くうこく跫音きょうおんにも似たものがあるだろう。
「女か」と、すこし落胆したが、それでもこの配所へは空谷くうこく跫音きょうおんだった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのくつは霜のいと夜深きに、空谷を鳴らして遠く跫音きょうおんを送りつつ、行く行く一番町の曲がり角のややこなたまで進みけるとき、右側のとある冠木かぶき門の下にうずくまれる物体ありて、わが跫音あしおとうごめけるを
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
空谷くうこく跫音きょうおんといおう乎、著るしく世間を驚かしたものだ。
はた尊きみ足の跫音きょうおん
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
これ空谷くうこく跫音きょうおんなり。盲人めいし急遽いそいそ声するかた這寄はいよりぬ。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
空谷くうこく跫音きょうおんである。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
異様の跫音きょうおんを響かしつつ、うたた陰惨の趣をなせり。
外科室 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)