足迹あしあと)” の例文
木戸を開けて表へ出ると、大きな馬の足迹あしあとの中に雨がいっぱいたまっていた。土を踏むと泥の音が蹠裏あしのうらへ飛びついて来る。かかとを上げるのが痛いくらいに思われた。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「木戸を開けて表へ出ると、大きな馬の足迹あしあとの中に雨が一杯たまつてゐた。」(「永日小品」の「蛇」)
文芸鑑賞講座 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
枯々とした樹木の間から見えるやぶの多い浅い谷底の方はまだ冬の足迹あしあとをとどめていたが、谷の向うには、薄青く煙った空気を通して丘つづきの地勢を成した麻布の一部がかすむように望まれた。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)