資治通鑑しじつがん)” の例文
世継物語とは歴史物語の意だし、『大鏡』の鏡は支那の『資治通鑑しじつがん』などの鑑と同じく、支那史学の立場から見た歴史の意味を持っている。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
かの公卿一味の“文談会”なども、この老学者を引っぱり出して、表面、資治通鑑しじつがんの講義を聴く会だなどと、世間を欺瞞ぎまんしていたものである。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そういう時宗右衛門は五百を相手にして、『資治通鑑しじつがん』の中の人物を評しなどして、容易に帰ることを許さない。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ことごとくこれを放免してやったという「資治通鑑しじつがん」に載せてある記事に酷似しているけれども、今仔細に両者を比較するときは、大いにその趣を異にしていることが分るのである。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
先生の本は二十年も三十年も前の本だ、先生がおれに貸してくれた本はスミスの代数だいすうとスウイントンの万国史と資治通鑑しじつがんそれだけだ、あんな本は東京の古本屋にだってありやしない。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「そうさ。『綱目』でもやっとだ。『資治通鑑しじつがん』が一人でかつげると思うか。」
梅雨晴 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
左内幽囚邸居中『資治通鑑しじつがん』を読み、註を作り漢紀を終る。また獄中教学工作等の事を論ぜし由、勝保余にこれを語る。獄の論大いにわが意を得たり。予益々左内を起して一議を発せんことを思う。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
「ああいう公卿も居る時世かと、わしもまた初めて知った。ひそかに、やッたところ、鷹野の狩装かりよそおいはしていたが、獲物は持たぬ。そのうえ、手にひらいていた漢書の題簽だいせんには“資治通鑑しじつがん”としてあった」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)