豊饒ほうぜう)” の例文
旧字:豐饒
大陸的な豊饒ほうぜうな男の性質に打たれて、何処にゐても自由にふるまへる民族性に、ゆき子は富岡にはなかつた明るいものを感じた。富岡に逢つてゐる時の胸を射すやうな淋しさはなかつた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
又、ただそんな理窟ばつた因縁いんねんばかりではなく、彼は心からこの花を愛するやうに思つた。その豊饒ほうぜうな、さかづきからあふれ出すほどの過剰くわじような美は、ことにその紅色の花にあつて彼の心をひきつけた。