調布ちょうふ)” の例文
「へ? わっしですかい。へえ、やはり、その、その、関東でございます。はい、関東でございます——関東は、関東は、ええと、調布ちょうふのはしで、へえ」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「一度は店へ帰ったが、いや気がさしたものか、暇を取って在所の調布ちょうふへ帰ったようですよ」
多摩川たまがわべりになった調布ちょうふの在に、巳之吉みのきちという若い木樵きこりがいた。その巳之吉は、毎日木樵頭さきやま茂作もさくれられて、多摩川の渡船わたしを渡り、二里ばかり離れた森へ仕事に通っていた。
雪女 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
お三の父親の友蔵は、四年ほど前までは布田ふだ宿しゅくで多摩川の漁師をしていました。布田は府中よりも一里二十三丁の手前で、こんにちでは調布ちょうふという方が一般に知られているようです。
半七捕物帳:68 二人女房 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
儂は少くも永住の形式を取って村の生活をはじめたが、果して此処ここに永住し得るや否、疑問である。新宿八王子間の電車は、儂の居村きょそんから調布ちょうふまで已に土工を終えて鉄線を敷きはじめた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
はずんだところで調布ちょうふあたりから料理を呼んでの饗宴ふるまいは、唯親類縁者まで、村方むらかた一同へは、婿は紋付で組内若くは親類の男に連れられ、軒別に手拭の一筋半紙の一帖も持って挨拶に廻るか
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)