たぶ)” の例文
こういう風に実行も出来ぬ地方問題を好餌こうじとして、一方には無邪気なる選挙区民をたぶらかし、他方では公共機関を誘惑して、これをその味方につけんとする。
選挙人に与う (新字新仮名) / 大隈重信(著)
あの年頃の方が、若い娘に參つてしまふと、よく、まるでたぶらかされたやうになるものですからね。ところで、あの方はその女と結婚しようとなすつたのです。
……鳴呼ああ、彼は何かにたぶらかされたようだった。何物にも同じような不満ばかりだった。ある楽匠にたいしては、断腸の思いをした。愛する友を失ったようなものだった。
それをあいつは、ちゃんと見抜いて、私までをたぶらかそうとしてるんです。女の口からは、つい言えもしない言いにくさから、今まで黙っていたのは、私も良くはありません。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さてその人民どもをたぶらかす邪法の方便は、まだまだそれだけではない。
ハビアン説法 (新字旧仮名) / 神西清(著)
乗円 咄、此老狐らうこみだりに愚民をたぶらかし居るな。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
懺悔ざんげして、おれの義弟おととにあやまれ。てめえは、二重三重に、亭主をたぶらかしただけでなく、あらぬ罪を石秀にも着せ、始終、石秀がうるさく自分に口説き寄って困るなどとぬかしたろうが
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)