詭計トリック)” の例文
将棋の木村名人は、十数年間、私と机を並べていた友人の一人だが、あの人は第一級の探偵小説ファンで、「あんな詭計トリックをどうして考えるのだ」
洋服の上へ着ていた浴衣を脱いでカバンへ突込むと、そいつを邸内へ置きにいったついでに、大急ぎで庭下駄の詭計トリックを弄し、女中達を叩き起したと云う寸法だ。
石塀幽霊 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
ねえ夫人おくさん、つまり、この詭計トリックの発因と云うのが、博士にかけられた貴女の電話にあったのですよ。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
兎も角、志津子夫人は、すこしばかりの詭計トリックを用いて、いよいよこの忌わしい『人形の家』をけ出す気になったのです。
すると、当然その竜舌蘭リネゾルム・オルキデエ詭計トリックが、鐘鳴器カリリヨン室のドア十二宮ゾーディアック円華窓えんげまどにも行われたのだろうがね。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
だから、ね、君。あの庭下駄の跡は、二人の真犯人が犯行の際につけたものではなくて、あれは、犯行の後から、故意に、あの双生児ふたごを陥し入れるためにつけられた、恐ろしい詭計トリックなんですよ。
石塀幽霊 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
まさに響歎きょうたんすべきものであるが、厳格に言えば、この素晴らしい詭計トリックにも、レコードの製作工程に対する、説明を欠いて居るという非難は免れない。
探偵小説と音楽 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
ところで、この羅針儀式マリナース・コムパスの特性が、貴女あなた詭計トリックに最も重大な要素をなしているのです。と云うのは、この合わせ文字を、閉じる時の方向と逆に辿たどってゆくと、三回の操作でかんぬきが開く。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そんな暢気のんきなことを言うのでした。どんな巧妙な詭計トリックも時の力の前には崩壊することを平次は知っていたのです。
「その間に妙な詭計トリックが行われたのだ——君の体力で、この屋上からビルディングの外側を、窓わくと雨樋とバルコニーを伝わって、下へおりる工夫はないか」
九つの鍵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
近頃の人気作家エレリイ・クイーンには、ピアノの象牙のキーの間に小さく畳んだ密書を隠して、そのピアノを弾く者に発見させるように仕向けた、味の細かい詭計トリックを用いた小説がある。
探偵小説と音楽 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
その出世作「カナリア殺人事件」の重大な詭計トリックは、ベートーヴェンの第五シンフォニー第二楽章アンダンテのレーベルを貼ったレコードに針を落すと、しばらくの間は音楽も何んにも聴えず
探偵小説と音楽 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
日頃の平次にない詭計トリックです。