見界みさかひ)” の例文
彼れは兄弟の見界みさかひをも失はうとした。而して次ぎ來るべき狂暴な動作を頭にたくらみながら、兄の握りしめてゐる右手を力まかせに拂ひのけようとした。
実験室 (旧字旧仮名) / 有島武郎(著)
そのうち川原も川向うの市街も見界みさかひが付かぬばかりに打けむつて、銀線のやうな雷雨が降つた。雨やどりしてゐる男女老若は笑談ぜうだんなどを云ひ云ひ、一歩も動くことが出来ずに居る。
イーサル川 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
随分主人のつらでも、友達の面でも、踏躙ふみにじつて、取る事に於ては見界みさかひなしの高利貸が、如何いかに虫の居所が善かつたからと云つて、人の難儀——には附込まうとも——それを見かねる風ぢやないのが
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)