見判みわ)” の例文
土地の農夫は黙りこくって、先年来と寸分ちがわない姿で、動いているのか動いていないのか見判みわけもつかぬほどのろのろと働いていた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
午後になって、暑熱あつさが加わって来ると、子供は一層弱って来た。そして烈しい息遣いをしながら、おりおり目を開いてかわきを訴えた。目には人の顔を見判みわける力もなかった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
老人の打ち卸す発矢はっしとした勢いには、破壊の憎みと創造の歓びとが一つになって絶叫しているようである。その速力には悪魔のものか善神のものか見判みわけ難い人間離れのした性質がある。
家霊 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
サッポロを離れた当分の間は、数えあげる移民の家もそれらしくちらほら見えたのであるが、シノロ、バンナグロとなればひろい原野の見判みわけもつかない。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)