袖手しゅうしゅ)” の例文
その証拠には、現代の医学は結核に対して何の権威を持ちません。権威どころか、荒れ狂う姿を呆然として袖手しゅうしゅ傍観ぼうかんして居るという有様です。
人工心臓 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
従って彼は世間にして、目まぐるしい生活の渦の中へ、思い切って飛びこむ事が出来なかった。袖手しゅうしゅをして傍観す——それ以上に出る事が出来なかった。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
島津の退き口というものは、武士道の花! 世に名高い! この太郎丸の退き口も、まずめったにひけはとらぬ! うかとかかれば怪我しますぞ! さりとて袖手しゅうしゅ傍観も
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
当時西郷の敗亡を袖手しゅうしゅ傍観したる板垣氏はひとり民権派の首領たる名誉をほしいままにして、政界の将来に大望を有するに至る、これを十年十一年の交における政論の一局状となす。
近時政論考 (新字新仮名) / 陸羯南(著)
重さが自然法則に従う自然的事実だとしても、これを袖手しゅうしゅ傍観していなければならぬということにはならない。我々の便利になるようにこれに抵抗したり、これを自由に働かせたりする。
さきに男のすなる事にもかかずらいしはこと国家の休戚きゅうせきに関し、女子たりとも袖手しゅうしゅ傍観すべきにあらず、もし幸いにして、妾にも女の通性とする優しき情と愛とあらば、これを以て有為の士をすすはげまし
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)