薬代くすりだい)” の例文
旧字:藥代
一閑張いっかんばりの机を取巻いて家族が取交す晩餐の談話というのは、今日の昼過ぎ何処そこの叔父さんが来てこの春の母が病気の薬代くすりだいをどういったとか、実家さとの父が免職になったとか
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
二十二銭茂吉薬代くすりだい。こんな工合である。ここに二十二銭茂吉薬代とあるのは、僕が絵具に中毒して黄疸わうだんになつたとき、父は何処どこからか家伝の民間薬を買つて来てくれた。それを云ふのである。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
「それはすまんな。じゃあこれを薬代くすりだいにでもして慰めてやって下さい」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ぢやないのよ。薬代くすりだいなんか知れたもんですわ」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「それも売りたいしなではないが、おふくろが病気なので、薬代くすりだいにこまるからやむなく手ばなすんです。ッぱらったみなさまがさわいでいると、せっかくのお客も逃げてしまいます。早くあっちへいってください」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)