蕩然とうぜん)” の例文
これによってお玉ヶ池の地は久しい間東都文雅の淵叢えんそうとなっていたが、度々の火災に二家の旧居も蕩然とうぜんとしてその跡なく「都門の文雅も遂に寥落りょうらくを致す。」
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
黄口少年、乳臭いまだ乾かず、わずかに数巻の西籍を読み、生呑活剥せいどんかっぱく儼然げんぜん学者をもっておるものあり、利をむさぼりてあくなきものあり。節義の風、廉恥の俗、蕩然とうぜん地をはらう。
爺は先達の婦のことを思い出すと、背中を丸くすぼめて蕩然とうぜんと蒼空を眺めつつ
土城廊 (新字新仮名) / 金史良(著)
毅堂の随筆『親灯余影』の序に「丙午ノ春余昌平黌ニアリ祝融しゅくゆうノ災ニ罹リ平生ノ稿本蕩然とうぜんトシテ烏有うゆうトナル。」
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
丙午ノ春、余昌平黌ニアリ。祝融しゅくゆうノ災ニかかリ、平生ノ稿本蕩然とうぜんトシテ烏有うゆうトナル。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)