たくわえ)” の例文
翁と交るものは其悠々たる様子を見て、郷里には資産があるものと思っていたが、昭和十年の春俄に世を去った時、其家には古書と甲冑かっちゅうと盆裁との外、一銭のたくわえもなかった事を知った。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
さあ、追々におたくわえになった、数々の宝を8560
ひげはやし洋服を着てコケをおどそうという田舎紳士風の野心さえ起さなければ、よしや身に一銭のたくわえなく、友人と称する共謀者、先輩もしくは親分と称する阿諛あゆの目的物なぞ一切皆無かいむたりとも