蒲衣子ほいし)” の例文
その間も、師の蒲衣子ほいしは一言も口をきかず、鮮緑の孔雀石くじゃくいしを一つてのひらにのせて、深いよろこびをたたえた穏やかな眼差まなざしで、じっとそれを見つめていた。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
蒲衣子ほいし庵室あんしつは、変わった道場である。わずか四、五人しか弟子はいないが、彼らはいずれも師の歩みになろうて、自然の秘鑰ひやくを探究する者どもであった。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
自分が油断をしているひまに、少年はひょいと水に溶けてしまったのだ、自分は確かにそれを見た、と。他の弟子たちはそんなばかなことがと笑ったが、師の蒲衣子ほいしはまじめにそれをうべなった。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)