あつま)” の例文
案の定四郎兵衛の軍は崩れて退き、明軍はく如くに馳せ上って来る。勘兵衛見て、時分はよしあつまり給えと云う。
碧蹄館の戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
見よ、大勢の旅客の視線が悉く彼一人の左右に、あつまつて居るではないか。中には、彼の側近く寄つて来て彼の顔を覗いて行く無遠慮ものさへあるではないか。
逆徒 (新字旧仮名) / 平出修(著)
高く抽き出でた花はあつまってまぼろしの雲と棚曳き魂魄を匂いの火気に溶かしている。林や竹藪の中にくぐまる射干しゃが、春蘭のような花すら美しき遠つ世を夢みている。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
会期の七日間、毎日の人気はその死人形にあつまって、そこばかりは朝から夕刻まで黒山のような人だった。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)