菜根さいこん)” の例文
といって出た饗膳にも、裏日本の味ともいえる魚介ぎょかいの新鮮や山野の菜根さいこんが、ゆかしく調理されていた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
村人はわずかな菜根さいこんはたけに見張りをつけるほど、食物はまるで実らなかった。その乏しいというよりも殆ど一本の菜っ葉をかぞえるくらいの畠は、夜にはいると荒らされて盗みの手がはいった。
野に臥す者 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
菜根さいこんみて百すべし」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そのうちに、下男が、菜をみ足してくると、妙秀は、かゆを煮、菜根さいこんいて、これを光悦の手づくりらしい小皿に盛り、かめ芳醇ほうじゅんを開けて、ささやかな野の食事が始まる。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
へだてなく語りおうて、ただ一夜をたのしむのが汁講しるこうの交わりじゃ。汁には到来のししがあり、菜根さいこんにはわしが手づくりの大根、ごぼうもある。……だが、菓子は城下の浙江饅頭せっこうまんじゅうを用いたいな。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)