苦海くがい)” の例文
苦海くがい十年の波を半分以上も泳ぎ越すうちに、あとにもさきにもたった一度の恋をした相手は立派な武士さむらいである。五百石の旗本である。
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これはとまた恟りなさいまして、花里に親の名をお尋ねなさると、大阪で越前屋佐兵衞と申しましたが商業しょうばいの失敗で零落いたし、親の為め苦海くがいに身を沈めましたと
一生懸命にうかして亭主のかたきが討ちたいと思って親類の止るのも聞かずに泥水の中に這入り、苦海くがいうちに居ても万一ひょっとして敵を尋ぬる手掛りにもなろうと思ったから、此んな処へ這入って居るので
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)