芭蕉扇ばしょうせん)” の例文
孫悟空に凝って、金箍棒きんこぼう羅刹女らせつにょ芭蕉扇ばしょうせんをありありと目に見た子供は、やがて原子の姿をも現身うつしみの形に見ることが出来るであろう。
簪を挿した蛇 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
しかし御主人は不相変あいかわらず、澄ました御顔をなすったまま、芭蕉扇ばしょうせんを使っていらっしゃいました。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
八百の間ことごとく火焔かえんにつつまれ、それを越えようとすれば黒鉄くろがね身体からだでもとけてしまうという火焔山では、孫悟空は羅刹女らせつにょ芭蕉扇ばしょうせんにあおられてひどい目にあった。
『西遊記』の夢 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
俊寛様は悠々と、芭蕉扇ばしょうせんを御使いなさりながら、島住居しまずまいの御話をなさり始めました。軒先のきさきに垂れたすだれの上には、ともし火の光を尋ねて来たのでしょう、かすかに虫のう音が聞えています。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
俊寛様は御腹立たしそうに、ばたばた芭蕉扇ばしょうせんを御使いなさいました。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)