腥気せいき)” の例文
旧字:腥氣
風なまぐさく、浪もまたなまぐさく、腥気せいきは人をおそうばかりであった。更に行くこと数里の後、凴は土地の者に訊いた。
彼は、湯鑵ゆがまに新しく水をいれて来て火鉢に炭をつぎ添へてかけた。彼は水にやかましかつた。近所の井戸のものには腥気せいきがあるとか、鹹気かんきがあるとかいつて用ひなかつた。
上田秋成の晩年 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
驚いて川に飛び込むわには、その飛び込む前に安息している川岸の石原と茂みによって一段の腥気せいきを添える。これがないくらいならわれわれは動物園で満足してよいわけである。
映画時代 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
打披うちひろげたりし油紙を取りて直行の目先へ突付くれば、何を包みし移香うつりがにや、胸悪き一種の腥気せいきありておびただしく鼻をちぬ。直行はなほも逆はでむ無くおもてそむけたるを、狂女は目をみはりつつ雀躍こをどりして
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)