にこにこしながら、長火鉢の向う側へ、胡床をかいた。自分の家のような気やすさである。印半纏に、半ズボンをはいている。
その前に胡床を掻き、赤銅の煙管を火鉢の縁にうち付けながら早朝から誰でも引見して談論風発するという豪傑肌でした。
私の家の持家の長屋にいた、茂ちゃんという子が、木柵の外から顔を覗かせて、母に向い、「おばさん。ぼくの鼻は胡床をかいているでしょ。」
さういふので、小さな山の頂へ、ドツカと胡床をかいてしまふやうなことになつては、もう人間もお仕舞である。進歩も發展も何も彼もなくなる。
貧乏人の多いむかしの画家の中でも、これはまたづば抜けた貧乏人で、住居といつては、わづかに胡床が組まれる程の小さな家で、雨が降る日にはいつも雨漏りがして仕方がなかつた。