聚落むら)” の例文
五間に十二間の長い一かくを遠巻きにして直接関係のない人々も群れていた。聚落むらから来た家族であり、街にすむ老幼男女であった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
草鞋わらじでも切れたのではないか。範宴は浄土寺の聚落むらあたりで、辻堂の縁にしばらく休んでいた。禅林寺の鐘の音が、吠える風の中で二更にこうを告げた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——そうですね、降るかと思いましたら、霧が散って、八瀬やせ聚落むらや、白川あたりのふもとが見えてきました」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
超然と、その人間の聚落むらを離れて、高嶺たかねの法城は、理想の生活に恵まれているかと思ったのは、いとも愚かな考えであった。ここも、下も、変りはないのである。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)