聖天町しょうでんちょう)” の例文
それは、田代の、いまのようにまだ役者にならない時分、聖天町しょうでんちょうの油屋の次男坊だったころ毎日のようにながめた光景けしきだった。
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
が、お綱はヒラリと横に避けて、近づくものを斬りとばしながら、まッしぐらに駈けだした——今戸河岸いまどがしから聖天町しょうでんちょうのほうへ。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
岸へ上った辺は花川戸はなかわどといいました。少し行くと浅草聖天町しょうでんちょうです。待乳山まっちやまの曲りくねった坂を登った上に聖天様の社があって、桜の木の下に碑があります。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
花川戸から、ずっと、もう一つ河岸の横町が聖天町しょうでんちょう、それを抜けると待乳山まつちやまです。
住まいは目と鼻の先浅草聖天町しょうでんちょう、名人かたぎも名人かたぎでしたが、読んで字のごとく、鍔の裏と表に柿の金象眼を実際の数で千個刻みつけるために、早く仕上がって一年半、少し長引けば三カ年
待乳山のふもと聖天町しょうでんちょうの方へ出ようと細い路地ろじをぬけた。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
猿若町さるわかまち聖天町しょうでんちょうを経て、遠く吉野町、山谷あたりから来るものばかりだった。まれには「吉原」からもかよって来た。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
五分ほどして、わたくしは、聖天町しょうでんちょうのほうへ石段を下りました。そして、猿若町のほうへとあるきました。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)