翠色みどり)” の例文
ある時は綾瀬の橋のなかばより雲はるかに遠く眺めやりしの秩父嶺の翠色みどり深きが中に、明日明後日はこの身の行き徘徊たもとおりて、この心の欲しきまま林谷にうそぶおごるべしと思えば
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そのお饒舌のてがらでゝ連れられて行つてやつたら角から二軒目の宿屋へ案内した。二階の障子を明け離してごゞ島の翠色みどりが延ばす手に染みつきそうな海を眺めながら七十五銭の昼飯を食つた。
坊つちやん「遺蹟めぐり」 (新字旧仮名) / 岡本一平(著)
それはから狻猊さんげいか何かの、黄金色きんだの翠色みどりだのの美しくいろえ造られたものだった。畳に置かれた白々しろじろとした紙の上に、小さな宝玩ほうがんは其の貴い輝きを煥発かんぱつした。女は其前に平伏ひれふしていた。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)