羽村はむら)” の例文
この辺の土地を、いわゆる縄張りと称して渡世している羽村はむらとめに、青梅の勘三という男だった。
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おきぬの生家は、ここからさほど遠くない、西多摩の羽村はむらにある。父親の商売は豆腐屋で、おきぬは次女であるが、つてがあって半年ほど前にこのアパートに女中として住込んだ。
早春 (新字新仮名) / 小山清(著)
一口に玉川の鮎が不味まずいといいますけれども羽村はむらせきからかみになると鼻曲り鮎と申して味もなかなか好くなります。酒匂川の鮎も本流よりは河内川こうちがわの支流でれた鮎が美味おいしゅうございます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
かねがね、疎開のお住居は、大菩薩峠の中里介山居士の生家に近い羽村はむら附近とは聞いてゐたが、つい、ご不沙汰に過ぎてゐた折へ、翁の方から先にお訪ねをうけてしまつた失禮もある。
折々の記 (旧字旧仮名) / 吉川英治(著)
介山居士は戦争中、生れ在所の西多摩郡の羽村はむらで急逝された。あれは何年のことであったろうか。救世軍きゅうせいぐんの秋元巳太郎氏が葬儀委員長をされたという簡単な新聞記事を読んだ記憶がある。
西隣塾記 (新字新仮名) / 小山清(著)