羽撃はばた)” の例文
と博士の言葉に返事をしながら、今眼の前に見る蝙蝠の影に、二人が少年少女だつた遠い昔の蝙蝠の羽撃はばたきが心の中で調子を合せてゐるやうで、懐しい悲しい気持ちがした。
蝙蝠 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
唯、縹緲ひようびようたる理想の白鷺は羽風おもむろ羽撃はばたきて、久方の天に飛び、影は落ちて、骨蓬かうほねの白く清らにも漂ふ水の面に映りぬ。これを捉へむとしてえせず、この世のものならざればなりと。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
そうして彼は若しも鳥ならば何よりも先きに羽撃はばたきするように驚いた。
あめんちあ (新字新仮名) / 富ノ沢麟太郎(著)
この時、落葉ともつかず、すすかたまりともつかない影が、子供たちの眼に近い艶沢つやのある宵闇の空間に羽撃はばたき始めた。その飛び方は、気まぐれのやうでもあり、かじがなくて飛びあへぬもののやうでもある。
蝙蝠 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
この時、落葉ともつかず、すすの塊ともつかない影が、子供たちの眼に近い艶沢つやのある宵闇の空間に羽撃はばたき始めた。その飛び方は、気まぐれのようでもあり、かじがなくて飛びあえぬもののようでもある。
蝙蝠 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)