罵詈雑言ばりぞうごん)” の例文
あの老人は怒りっぽい人で、すこぶる巧妙な罵詈雑言ばりぞうごんを並べ立てる……あんな人にはこれまでめったに出逢ったことがありません。
椰子の葉を叩くスコールの如く、麺麭パンの樹に鳴く蝉時雨せみしぐれの如く、環礁の外に荒れ狂う怒濤の如く、ありとあらゆる罵詈雑言ばりぞうごんが夫の上に降り注いだ。
南島譚:02 夫婦 (新字新仮名) / 中島敦(著)
二人はひげがないが、一人は髭がある。眼鏡を掛けたのが二人と髭のあるのが一人いて、それが何時も私に向って罵詈雑言ばりぞうごんを致します。いくら止めろと言っても止めませぬ。
そして必ず附言する——英人は片言隻句へんげんせっくにも、本名を記すことを忘れないと。ジョンブル気質礼讃かたぎらいさんである。しかり、匿名での一言居士いちげんこじは、卑怯でもあり、罵詈雑言ばりぞうごんは慎しまなくてはならぬ。
青バスの女 (新字新仮名) / 辰野九紫(著)
大変、いったいなんとした叫び声だろう! こんな不自然な物音や、こんな咆哮ほうこうや、悲鳴や、歯がみや、哀泣あいきゅうや、乱打や、罵詈雑言ばりぞうごんは、いままでついぞ一度も聞いたことも、見たこともない。
私は即刻この行為と、我国でこのような場合に必ず起る罵詈雑言ばりぞうごんとを比較した。何度となく人力車に乗っている間に、私は車夫が如何に注意深く道路にいる猫や犬や鶏を避けるかに気がついた。
といても立っても居られぬほどの貴き苦悶を、万々むりのおねがいなれども、できるだけ軽く諸君の念頭に置いてもらって、そうして、その地獄の日々より三年まえ、顔あわすより早く罵詈雑言ばりぞうごん
喝采 (新字新仮名) / 太宰治(著)