繍取ぬいとり)” の例文
わたしがこの上沓に鬱金香の繍取ぬいとりをさせられたのは、お前さんが鬱金香を好いているからだわ。それから。
忽然こつぜん川岸づたいにけ来る一人の女がハタとわが足許につまずいて倒れる。いだき起しながら見遣みやれば金銀の繍取ぬいとりある裲襠うちかけを着横兵庫よこひょうごに結った黒髪をば鼈甲べっこう櫛笄くしこうがい飾尽かざりつくした傾城けいせいである。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
○ハンケチは晒麻さらしあさの白きを上等とす。繍取ぬいとりまたは替り色は婦人のものなり。男子これを用る時は気障きざの限りなるべし。米国にてはきざな男折々ハンケチを上衣うわぎ胸のかくしよりちよつと見せる風あり。
洋服論 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)