綺麗好きれいず)” の例文
台所といえば黒くくすぶりてむさ苦しきように聞ゆれどもこの家の台所は妻君が自慢顔に客を連れ込むほどありて平生へいぜい綺麗好きれいずきさこそと思われ、拭掃除ふきそうじも行届きかまども板の間も光り輝くばかり。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
綺麗好きれいずきな島田は、自分で尻端折しりはしおりをして、絶えず濡雑巾ぬれぞうきんを縁側や柱へ掛けた。それから跣足はだしになって、南向の居間の前栽せんざいへ出て、草毟くさむしりをした。あるときはくわを使って、門口かどぐち泥溝どぶさらった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
綺麗好きれいずきの妻のまわりには、自然にこまごましたものが居心地いごこちよく整えられていたし、夜具もシイツも清潔な色をたたえていた。それらには長い病苦に耐えた時間の祈りがこもっているようだった。
美しき死の岸に (新字新仮名) / 原民喜(著)