絶間とめど)” の例文
一新平民——先輩が其だ——自分も亦た其で沢山だ。斯う考へると同時に、熱い涙は若々しい頬を伝つて絶間とめども無く流れ落ちる。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
おっしゃりながら、その長襦袢を御抱きなすったまま、さんざん思いやって、涙は絶間とめどもなく美しい御顔を流れました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
流行はやりの薄色の肩掛などをまとい着けた彼女の姿を一目見たばかりで、どういう人と暮しているか、どういう家を持っているか、そんなことが絶間とめどもなく想像された。
刺繍 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
読み聞かせているうちに、痛憤とも、悔悟とも、冷笑とも、名の付けようの無い光を帯びた彼の眼から——ワンと口を開いたような大きな眼から、絶間とめどもなく涙が流れて来た。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
つぶった目蓋まぶたからは、熱い涙が絶間とめどもなく流出ながれだして、頬を伝って落ちましたのです。馬は繋がれたまま、白樺しらはりの根元にある笹の葉を食っていたのですが、急に首を揚げて聞耳を立てました。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と人々の唱へる声は暫時しばらく止まなかつた。多くの賽銭はまた畳の上に集つた。お志保も殊勝らしくを合せて、奥様と一緒に唱へて居たが、涙は其若い頬を伝つて絶間とめども無く流れ落ちたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
直樹は三吉夫婦と一緒に食卓にむかっても、絶間とめどがなく涙が流れるという風であった。その晩は三人とも早く臥床ねどこに就いたが、互におちおち眠られなかった。直樹は三吉と枕を並べてしくしくやりだす。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)