素見客ひやかし)” の例文
少時前いまのさきッたのは、角海老かどえびの大時計の十二時である。京町には素見客ひやかしの影も跡を絶ち、角町すみちょうには夜をいましめの鉄棒かなぼうの音も聞える。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
少時前いまのさきツたのは、角海老かどえびの大時計の十二時である。京町には素見客ひやかしの影も跡を絶ち、角町すみちやうにはいましめの鉄棒かなぼうの音も聞える。
里の今昔 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
その日には界隈の町の人たちも、大門口から五丁目の非常門から裏門からそれぞれ詰めかけてきて、素見客ひやかしの仲間も常よりは多くその賑いは格別であった。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
宿場端れの泡盛屋あわもりやで呑めない地酒に時間を消し、すっかり暗くなってから、品川の廓街くるわまちへべつべつの素見客ひやかしのような顔をしてくわえ楊枝で流れ込んで行った。
少時前いまのさきッたのは、角海老かどえびの大時計の十二時である。京町には素見客ひやかしの影も跡を絶ち、角町すみちょうにはいましめの鉄棒かなぼうの音も聞える。
里の今昔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そのまま窓に坐って、通り過る素見客ひやかしにからかわれたり、又此方こっちからもからかったりしている。其間々には中仕切の大阪格子を隔てて、わたくしの方へも話をしかける。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
素見客ひやかしが五六人来合すのを待って、その人達の蔭に姿をかくし、溝の此方こなたからお雪の家をのぞいて見ると、お雪は新形の髷を元のつぶしに結い直し、いつものように窓に坐っていた。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
表通のラディオや蓄音機の響も素見客ひやかしの足音に消されてよくは聞えない。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)