粒々つぶつぶ)” の例文
元来細胞なるものは、人間の身体の何十兆分の一という小さい粒々つぶつぶで、度の弱い顕微鏡にはかからない位の微粒子である。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
浪のように起伏する灯の粒々つぶつぶやネオンの瞬きは、いま揺り覚まされた眼のように新鮮で活気を帯びている。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
すこしはなれている、ぼくにさえ聞えるほどのはげしい動悸どうき粒々つぶつぶの汗が、小麦色に陽焼ひやけした、豊かなほおしたたり、黒いリボンで結んだ、髪の乱れが、くびすじに、汗にれ、まつわりついているのを
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
ですから私の下僕しもべなどはそういう景色のよい所へ来ても、ヤクのふん粒々つぶつぶ行列して居る野原へ来ても一向平気なものです。雨の降ってるのも自分の着物の濡れるのも打忘れて面白くて堪らぬ。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
何か眼の中が熱くなって来て、墓場の上にあか粒々つぶつぶがパッと散って行くほど、僕は僕の不甲斐ふがいなさを彼女に見せつけられたようだ。で、僕はたまらなくなって素足のまま墓場の道へ走って出た。
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)