粂八くめはち)” の例文
自分はアンナ・パヴローヴァの踊りを見たのちにも、粂八くめはちの鷺娘の印象が決して自分の心に薄らがないのを感ずる。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
河井と喜多村はその頃は上方へでも行っていたか出ていなかった、赤樫満枝を女団十郎と称ばれた粂八くめはちが新派へ加入して守住月華といってつとめていた
生前身後の事 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そのそばは折れ曲がって左右とも床見世とこみせで、講釈場、芝居小屋などあった。この小屋に粂八くめはちなぞが出たものです。
岩井粂八くめはちといった時分の弟子には、紀久八きくはちたちがあるが、月華になってからは、かつらとか、名古屋の源氏節から来た女にも、華紅かこうとか、華代子とかいう名をつけた。
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
わたしが初めて粂八くめはちという女優を舞台の上で観たのは、この年の三月のことであった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
徳川の末期に一たび禁制となり、その後は踊りの師匠とかお狂言師とかに転向していたが、明治の初年、岩井粂八くめはちという名優が現われて女役者の復活、即ち女芝居の再興を見るに至った。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
水野好美も画筆をなげうって参加した。女形はほんとうの女優でなければいけないという学海居士の意見で、千歳米坡ちとせべいはが出演することになった。市川粂八くめはち守住月華もりずみげっかという名で加入した。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)