籠行燈かごあんどん)” の例文
新字:籠行灯
家具や調度の物のあんばい、お家様の部屋らしいが、籠行燈かごあんどんは墨のような色をしてお久良くらも誰もいなかった。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
默つて入ると、中には籠行燈かごあんどんが點いて、座蒲團が二つ、平次が來るのを待つて居たやうな心憎い用意です。
籠行燈かごあんどんの中にともした電燈が所々に丸い影を神代杉じんだいすぎの天井にうつしている。うす暗い床の間には、寒梅と水仙とが古銅の瓶にしおらしく投げ入れてあった。軸は太祇たいぎの筆であろう。
老年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いつでも寝られるようにと、久助は蚊帳の一端をりっぱなしにしておいて、蒲団ふとんなども出しておきました。籠行燈かごあんどんの光がぼんやりとしているところで、竜之助は盃をあげながら
籠行燈かごあんどんの下に、小鍋の湯気をたて、酒のかんもそこでしながら、ふたりは、その晩も、しめやかだった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夜更け、人静まった時分、お銀様は籠行燈かごあんどんの下で関ヶ原軍記をひもとき出しました。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いつみても、臙脂えんじいろの毒の花に、甘粘あまねばい蜜をたたえているようなおえんは、湯上がりの濃粧のうしょう籠行燈かごあんどんに浮き立たせて、ひじかけ窓から、前の小六を流しめに見ていた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と云いながら、御方はいきなりフッと籠行燈かごあんどんを吹き消した。不意に落ちた闇のとばり……新九郎がはッとして跳びのく音に添って、御方の影も豹のように追いかかった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)