簪屋かんざしや)” の例文
いつの間にかその大理石の柱のかげには旧芝居の名残なごりなる簪屋かんざしやだの飲食店などが発生繁殖して、遂に厳粛なる劇場の体面を保たせないようにしてしまった。
銀座 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
薬師の縁日のときは新道の出口のところまで夜店が出て、酸漿屋ほおずきや簪屋かんざしや飴屋あめやなどが店を張っていた。
暴風雨に終わった一日 (新字新仮名) / 松本泰(著)
「でも誰か、あてがなくちゃ……おかしいわ。いくらに買ったのこれを……私簪屋かんざしやで踏まして見るわ。」
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
大方玩具屋おもちゃやですが、絵草紙屋えぞうしやなどもありますし、簪屋かんざしやも混っています。絵草紙は美しい三枚続きが、割り竹にはさんで掛け並べてありました。西南戦争などの絵もあったかと思います。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)