筆者わたし)” の例文
筆者わたしが知っている女では、これも、先代か先々代かの、尾張おわりの殿様をまるめた愛妾、お家騒動まで起しかけた、柳橋の芸者尾張屋新吉と似ている。
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
筆者わたしは、あの時以来、一本松へはまだ行って見ないで居る。恐れて毛並は見定めなかった、坂を駆出したのは、残った獅子だったかも知れません。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(同好の怪談は、ここでお冬さんが幽霊になって消えるのか、と筆者わたしはまた思った、が、そうではなかった。)——
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
筆者わたしはその時、二人の酒席のつややかな卓子台ちゃぶだいの上に、水浅黄のつまを雪なす足袋に掛けて、片裾庭下駄を揚げた姿を見、且つ傘のしずくの杯洗にこぼるる音を聞いた。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)