稼穡かしょく)” の例文
勿論其の当時にあっては予も総べての希望を諦め老親の膝下しっか稼穡かしょくを事とする外なしと思ったが、末子たる予は手許に居るというても、近くに分家でもすれば兎に角
家庭小言 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
さらに重大にしてさらに静粛なる稼穡かしょくの祭の予備の儀式から発達したものではないかと思う。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
子曰く百日の蜡一日の沢、なんじが知るところにあらざるなり、百日稼穡かしょくの労に対しこの一日やすんで君の恩沢を楽しむ、その休息日に農夫のみか有益禽獣までも饗をけたので
彼の父杉百合之助ゆりのすけ敬神けいしん家にして忠摯ちゅうし篤実とくじつなる循吏じゅんりなりき。彼の母児玉氏は、賢にして婦道あり、姑につかうる至孝、子を教ゆる則あり、仁恕じんじょ勤倹きんけん稼穡かしょくの労に任じ自から馬を牧するに至る。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
男性はその活動によって益〻ますますその心身の能力を発達せしめ、女性の能力は或る退縮を結果すると共に、益〻活動の範囲をせばめて行って、遂にはその活動を全く稼穡かしょくの事にのみ限るようになった。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
近ごろ本邦村落の凋落はなはだしく、百姓稼穡かしょくを楽しまず、相ひきいて都市に流浪し出で、悪事をなす者多し。これを救済せんとて山口県等では盆踊りをすら解禁し、田中正平氏らはこれを主張す。
神社合祀に関する意見 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)