神河内かみこうち)” の例文
八月の末になりますと、徳本峠とくごうとうげの頂あたりが真赤になって、九月の上旬になりますと、神河内かみこうちのもみじがととのって参ります。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
何処に自分は適帰するのであろう、昨日来た路は記憶している、引き返して中房温泉に戻れば、最も安全である、併し自分は奥常念を超え蝶ヶ岳から神河内かみこうちへ下りてみたい
奥常念岳の絶巓に立つ記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
ひたひたと水を渡って、林の奥に忍んで来る雨の音が、国にいた頃よく遊びに行った、赤城や神河内かみこうちの森の様子を思いださせる、ただ白樺は梢が枝垂れて、風にゆれるのが柳でも見るような気がした。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
この神河内かみこうちの自然に忠実なるスケッチ数十枚を残して、死なれてしまった。
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
綿津見は蒼海わだつみのことで、今の安曇あずみ郡は蒼海から出たのであろう、自分は土地に伝わっている神話と地形から考えて、「神河内かみこうち」なる文字を用いる、高地には純美なるアルプス渓谷の意味は少しもない
梓川の上流 (新字新仮名) / 小島烏水(著)