碇泊中ていはくちゅう)” の例文
この夜、風浪が高かったので、碇泊中ていはくちゅうの西国船は各〻、船と船とのあいだに繋綱もあいをとりあい、また海泥に深くいかりを下ろしていた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぼく達の大洋丸は、悠々ゆうゆうと、海を圧して、碇泊中ていはくちゅうの汽船、軍艦ぐんかんの間をい、白い鴎に守られつつ、進んで行きます。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
月の出ない前、碇泊中ていはくちゅうの独艦のサーチライトが蒼白い幅広の光芒こうぼうを闇空に旋回させて、美しかった。床に就いたが頸部けいぶのリウマチスが起って中々眠れない。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
現在このスカパフロー碇泊中ていはくちゅうの軍艦中で一番でかい軍艦であって、二万九千百五十トンの主力艦であり、速力は二十二ノット、主砲としては十五インチ砲を八門、副砲六吋十二門、高角砲こうかくほう四吋八門
沈没男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
二三日前突然、碇泊中ていはくちゅうの軍艦に出動命令が下り、沿岸を廻航してアトゥア叛民を砲撃することになった由。一昨日の午前中、ロトゥアヌウからの砲声が我々を脅した。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
先月来の悪性の感冒もようやえ、この二三日、続けて、碇泊中ていはくちゅうのキューラソー号へ遊びに行っている。今朝は早く街へ下り、ロイドと共に政務長官エミイル・シュミット氏の所で朝食をよばれた。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)