石蒜せきさん)” の例文
ついでにわたくしは此「秋行」の絶句の本草家蘭軒の詩たるにそむかぬことを附記して置く。それは石蒜せきさんが珍らしく詩に入つてゐることである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
そして中国名は石蒜せきさんであって、その葉がニンニクの葉のようであり、同国では石地せきちに生じているので、それで右のように石蒜せきさんといわれている。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
それをゆるめようとして、思量を植物に転じた。石蒜せきさんのことから鴎外を引き合いに出した。そして放肆ほうしな考察はいつしか鴎外の文学の芸術性にまで及んだ。
このマンジュシャゲ、すなわちヒガンバナ、すなわち石蒜せきさんは日本と中国との原産で、その他の国にはない。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
ここに石蒜せきさんの一例がある。鶴見はそれを面白い語り草としてよろこんでいる、伊沢蘭軒いざわらんけんが石蒜を詩に入れているのを発見したといって、鴎外がひどく珍らしがっている、あの一条の話である。
サフランは石蒜せきさんとその寂しい運命を分け合っている。鶴見がまだ子供の時分、国から叔母が来ていたが、血の道の薬だといって濃い赤褐色のせんじるを飲んでいた。鶴見にはそれだけの思い出しかない。