真暗三宝まっくらさんぼう)” の例文
仔細しさいあって、てまえは、この坂を貴辺あなた真暗三宝まっくらさんぼう駆下りましたで、こちらのこの縄張は、今承りますまで目にも入らず、貴辺がおいでなさる姿さえ心着かなんだでござります。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
真暗三宝まっくらさんぼう駆けいだした,それから土堤の半腹まで往き、はるかにこちらをふり向いたが、上から勘左衛門が手招ぎをしたら、またわイわイと言ッて一目散に駆け下りてしまッた。
初恋 (新字新仮名) / 矢崎嵯峨の舎(著)
……黙って切ってくれて、ふふふんと笑うと、それまでこらえていたらしい乗客が一斉いっときわっ吹出ふきだしたじゃありませんか。次の停車場へ着くが早いか、真暗三宝まっくらさんぼうです。飛降とびおり同然。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
赤蛙あかがえるが化けたわ、化けたわと、親仁おやじ呵々からからと笑ったですが、もう耳も聞えず真暗三宝まっくらさんぼう。何か黒山くろやまのような物に打付ぶッつかって、斛斗もんどりを打って仰様のけざまに転ぶと、滝のような雨の中に、ひひんと馬のいななく声。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)