相鬩あいせめ)” の例文
当時の水戸藩にある才能の士で、誠でないものは奸、奸でないものは誠、両派全く分かれて相鬩あいせめぎ、その中間にあるものをば柳と呼んだ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
小平太にしてみれば、母娘に対する同情から出たとはいえ、大事を抱えた身の末のげないことはよく知っている。悔恨と愛慾とは初めから相鬩あいせめいだ。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
しかしここにある乱立相鬩あいせめいでいる松どもは、淋漓りんりたる悲しいものを人間からあたえられていないものはない、普通の樹木に決して見られない人くさいものが、立派な形の奥の方でもだえているのだ
生涯の垣根 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
物質を中心にして相鬩あいせめいでいる都会生活とは何という相違であろう。
秘められたる挿話 (新字新仮名) / 松本泰(著)