相逢あいあ)” の例文
なべて人の世に相逢あいあうということ、うなずき合うということ、それ等は、結局、この形に於てのみ真の可能なのではあるまいか。寂寞の姿と無々むむの眼と——。
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
(それこそ、二人は相逢あいあうの遅きをうらむと云うほどでしたよ)と云う形容詞を用いて皆を笑わした。
青い紐 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
文三が某校へ入舎してからは相逢あいあう事すらまれなれば、ましひとつに居た事は半日もなし。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
細長き画面の上部を二階となし階段によりて男女の相逢あいあふさまもしからず。柱絵は春信の後継者たる湖龍斎に至りますます複雑多様となり、またますます妖艶淫卑いんぴの画題を選みき。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
誰人たれびとも知るかのキップリング氏の「東は東、西は西、両者永遠に相逢あいあうことなし」
東西相触れて (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
当然それは思い出されることにちがいないのだが、野村の妻や子供たちとは相逢あいあおりもなく過ごしてその美しさを知らぬミネも、閑子の姿の上に現れた器量の悪さだけは大きく心に浮んだ。
妻の座 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
川のほとりでのみ相逢あいあへる男女がある。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)