盆踊ぼんおど)” の例文
然しこのまずしい小さな野の村では、昔から盆踊ぼんおどりと云うものを知らぬ。一年中で一番好い水々みずみずしい大きな月があがっても、其れは断片的きれぎれに若者の歌をそそるばかりである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
やがて、オルガンにあわせて、五人は歌をうたいながら、おどりだした。手ぶりや、足のふみ方や、ぐるぐるまわって行進したり、あともどりしたりするところなど、すべては盆踊ぼんおどりそっくりだった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
八月が来ると、盛んな盆踊ぼんおどりが毎晩そこで開かれた。学校に宿直していると、その踊る音が手にとるように講堂の硝子がらすにひびいてはっきりと聞こえる。十一時を過ぎても容易にやみそうな気勢けはいもない。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)