皺枯しゃが)” の例文
やや皺枯しゃがれた年輩ものの声と、もう一つは、たしかに聴き覚えのある、あの雪之丞の和らかく美しい声が、ひそひそとささやき合っているのだった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
この声はさっきの「おい」よりも少し皺枯しゃがれていたから、大方別人だろうと鑑定した。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
富蔵は皺枯しゃがれ声ですらすらと弁じながら、飽くまでも知らないと強情を張った。亀吉はとうとう腹を立てて、喧嘩腰でしきりに問い落そうと試みたが、彼はどうしても口をあかなかった。
半七捕物帳:17 三河万歳 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
皺枯しゃがれ声で恋を語るなどは、考えただけでも身ぶるいものではありませんか。
法悦クラブ (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
その中でお爺さんが真先に皺枯しゃがれ声で口を利いた——
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
と、皺枯しゃがれ声でいった。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
吉原冠り、下ろし立ての麻裏あさうらの音もなく、平馬の後からついて行く闇太郎——、河岸は暗し、頃は真夜中。いい気持そうに、弥蔵やぞうをきめて、いくらか、皺枯しゃがれた、さびた調子で
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
ただしその声は旅鴉たびがらすのごとく皺枯しゃがれておったので、せっかくの風采ふうさいおおいに下落したように感ぜられたから、いわゆる源ちゃんなるもののいかなる人なるかを振り向いて見るも面倒になって
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
皺枯しゃがれた声で——
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
奇怪なことを銀杏の樹蔭からいいかけられて立ちすくんだうら若い女形——胸の動悸どうきをしずめようと、するかのように、白い手で、乳のあたりを押えたが、つづけて、皺枯しゃがれ声が、言いつづける。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)