皆済かいさい)” の例文
「百両のお金がございましたらせめて当座の借金だけでも皆済かいさいすることが出来ますのになあ」
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「タイムスはたしかだが、僕のはすこぶる不慥ふたしかだよ。これからがいよいよ巧妙なる詐偽に取りかかるのだぜ。よく聞きたまえ月十円ずつで六百円なら何年で皆済かいさいになると思う、寒月君」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
野原の土地は坪二十五円以上となり、皆済かいさいして、主家と土地五十坪のこったそうです。御安心でしょう。富ちゃんせんの手紙で、嫁をとってもやって行けると強調していたが、どうかしら。
人の世話で頼母子講たのもしこうこしらえて一口ひとくち金二朱きんにしゅずつで何両とやらまとまった金が出来て一時の用を弁じて、その後、毎年幾度か講中が二朱ずつの金を持寄もちより、鬮引くじびきにて満座に至りて皆済かいさいになる仕組しくみであるが
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
いかな見え坊の細君もここに至って翻然ほんぜん節を折って、台所へ自身出張して、飯もいたり、水仕事もしたり、霜焼しもやけをこしらえたり、馬鈴薯ばれいしょを食ったりして、何年かの後ようやく負債だけは皆済かいさいしたが
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)