白氏文集はくしもんじゅう)” の例文
老人は白氏文集はくしもんじゅうを愛読していて、興に乗ずると、こんな工合に文句を暗誦するのであるが、これが出る時はそろそろ酒がまわって来た證拠であった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
範宴はんえんは、宿房の一間ひとまに、坐っていた。机のうえには、儒学じゅがくの師、日野民部から学んだ白氏文集はくしもんじゅうが載っている。これは、山へのぼってからも、離さない書物であった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
古典文芸の鑑賞につちかわれる一種の雰囲気である点であって、その「詩」をつくり出すために、定家は『白氏文集はくしもんじゅう』の第一・二ちつを読めと、『詠歌大概』にも『毎月抄』にものべており
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
北斎ほくさいの描いたという楊貴妃ようきひふくが気に入って、父にねだって手に入れた時、それにあう文字を額にほしいと思って、『文選もんぜん』や『卓氏藻林たくしそうりん』や、『白氏文集はくしもんじゅう』から経巻まで引摺ひきずりだして見たが
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
此の詩が白氏文集はくしもんじゅうにある「鶴を失ふ」と云う題の五言律詩であることを発見したので、当時は何のことか解し得なかったのであるが、しかし此の文句はそれから後も
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)