甲良こうら)” の例文
真円まんまるく拡がった薔薇の枝の冠の上に土色をした蜥蜴とかげが一ぴき横たわっていた。じっとしていわゆる甲良こうらを干しているという様子であった。
蜂が団子をこしらえる話 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
石畳いしだたみ穿下ほりおろした合目あわせめには、このあたりに産する何とかいうかに甲良こうらが黄色で、足の赤い、小さなのがかずかぎりなくむらがって動いて居る。
星あかり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なぜって、亀の甲良こうらはおそろしくしっかりしているじゃアないか。あの甲良のようにしっかりと、どこまでも走って行くことが出来るよと。
兎と亀 (新字新仮名) / ロード・ダンセイニ(著)
と、仏像はみるみる消えて甲良こうらが十二畳敷以上もありそうに思われる大きな蟹の姿が現れて来たが、その背には伝蔵の忘れることのできないお種が腰をかけていた。
蟹の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
実際そのへんにはあか甲良こうらを背負った小さなかにがいかめしいはさみを上げて、ざわざわと音を立てるほどおびただしく横行していた。それがいかにも晩春の夕暮れらしかった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
市ヶ谷やきもち坂の甲良こうら屋敷だ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)