献身けんしん)” の例文
悲しげな、真剣しんけんな、美しい顔で、そこには心からの献身けんしんと、なげきと、愛と、一種異様な絶望との、なんとも言いようのないかげがやどっていた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
人間は、自分の利益とか快楽にしか奉仕しないということ、犠牲とか献身けんしんとかいうことは、その苦痛をおぎなって余りある自己満足があって始めて成立し得ること。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
とかく献身けんしんとか犠牲ぎせいとかいうと、いかにも高尚こうしょうに聞こえ、とても我々凡人ぼんじんの及ぶところでないように思われるが、この高尚なる心も我が物となすことができると思う。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
あんずるに視覚を失った相愛の男女が触覚しょっかくの世界を楽しむ程度は到底われの想像を許さぬものがあろうさすれば佐助が献身けんしん的に春琴につかえ春琴がまた怡々いいとしてその奉仕を求めたがいむことを
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)