燭光あかり)” の例文
停留所で降りた時、彼の眼の中を通り過ぎた燭光あかりの数は、夜の都の活動を目覚しく物語るに充分なくらい、右往左往へちらちらした。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私は遠退とほのいてゆく燭光あかりをじつと見まもつてゐた。彼は極めて靜かに廊下をよぎり、出來るだけ音をたてないやうに階段室のドアを開けて後をとざした。それで燈火あかりの最後の光も消えてしまつた。
彼はその間に立って、目的の横町へ曲る前に、これらの燭光あかりと共に十分ぐらい動いて歩こうか歩くまいかと迷った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
実を云うと、自働車の燭光あかりで照らされた時、彼のひとみうちに映ったこの人の影像イメジは津田にとって奇異なものであった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)